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佐藤昭大の現役時代、生い立ちやプレースタイルに迫る【第475回】

安定したセービングと的確なコーチングをもったGK佐藤昭大。

非常に研究熱心で知られ、常に最高の準備をしてゲームに臨む姿勢は多くの関係者から信頼された。

2017年にはファジアーノ岡山戦で、後半アディショナルタイムに攻め上がり、同点ゴールを頭で決める。
この劇的なゴールはGKとしてJリーグで史上8人目となるゴールとなり、大きな注目を集めた。

佐藤昭大のJリーグ入り前


佐藤は1986年に三重県三重郡朝日町に生まれた。

朝日町立朝日小学校入学後、小学校2年生の時に兄の影響でサッカーを始める。

朝日町立朝日中学校入学後に頭角を現す。
同じ三重県内の同学年に八田直樹がおり、ともにU-15日本代表に選出されるようになる。

中学時代に、サンフレッチェ広島ユースのスカウトから声をかけられ、卒業後に親元を離れ、広島ユースへ加入した。
同期に髙萩洋次郎・前田俊介・髙柳一誠らがいる。

1年次からさっそくトップチームのキャンプに呼ばれるようになると2種登録される。
高校2年次にユースでレギュラーの座を掴むと、クラブユース選手権、Jユースカップの2冠を取り、高円宮でもベスト4入りに貢献。
高校3年次にはキャプテンに就任し、クラブユース選手権連覇、高円宮杯初優勝、Jユースカップ準優勝に貢献した。

また佐藤は高校3年次の清水エスパルスとの開幕戦でベンチ入りを果たす。
出場機会はなかったが下田崇の控えとしてリーグ戦7試合にベンチ入りをするなど将来を嘱望された。

高校卒業後、サンフレッチェ広島のトップチームに昇格。
同期入団に前田俊介、髙柳一誠、森脇良太、髙萩洋次郎、桒田慎一朗、入船和真、中尾真那、西河翔吾がいる。

佐藤昭大のJリーグ入り後

入団1年目の2005年10月15日第27節FC東京との試合で、負傷した下田崇と交代でJリーグデビューを飾る。

その後のリーグ戦は残り8試合すべてに出場したが、無失点で抑えた試合は1試合のみで3勝2分3敗の成績だった。

2006年は下田崇が復帰したため、リーグ戦の出場はなかった。

2007年は出場機会を求めて愛媛FCへレンタル移籍。
第2節東京ヴェルディ戦から起用されるとシーズンを通して活躍しリーグ戦28試合に出場した。

2008年はJ2サンフレッチェ広島へ復帰。
左膝に故障を抱える下田崇やベテランの木寺浩一とのポジション争いを制し、リーグ戦24試合に出場。
サンフレッチェ広島のJ1昇格に貢献した。

2009年は守護神として開幕戦から出場を続けるも、第6節アルビレックス新潟戦で右足後十字じん帯を断裂。
その後は同年代の中林洋次が起用されるようになった。

2010年は鹿島アントラーズへ移籍。
Jリーグ通算77試合に出場した経験から、曽ヶ端準に次ぐ第2GKとして大きな期待を受けた。
また、同チームの新井場徹に容姿が似ていることから早くもサポーターの心を掴む。
2012年には背番号1を背負うも、鹿島では出場機会に恵まれず加入から5年間はリーグ戦での出場機会はなかった。
2015年にそれまでの絶対的守護神であった曽ヶ端準から開幕スタメンの座を奪い出場を続けるも、シーズン途中で曽ヶ端準の控えに回ることになった。

2016年にはJ2ロアッソ熊本に移籍。
清川浩行監督のもとで守護神として活躍。
同年はキャリアハイとなるリーグ戦41試合に出場した。
2017年は控えに回ることになったが、同年3月12日、第3節のモンテディオ山形戦ではアディショナルタイムに攻め上がり、コーナーキックを頭で合わせて貴重な同点ゴールを決め、大きな注目を集めた。

2019年はモンテディオ山形へ移籍。
櫛引政敏が正GKとして起用されたため、出場機会は少なかったが、経験豊富な2ndGKとしてチームを支えた。
2020年、リーグ戦13試合に出場したがこの年をもって現役を引退した。

佐藤昭大の引退後と現在

佐藤は引退後、GKコーチとしてのキャリアをスタート。

2021年に鹿島アントラーズジュニアユースのGKコーチに就任している。

佐藤昭大についてこんなエピソードがある。

2020年12月13日、ホーム最終戦である第40節ファジアーノ岡山戦。
前日に現役引退を表明した佐藤はこの試合でベンチ入りを果たした。
後半42分、2-0で勝ち越していた山形の監督石丸清隆は、最後のカードとして佐藤をピッチに送る。

キャプテンのDF山田拓巳は試合前のコイントスでエンド変更を選択した。
いつもはエンドを選択しないのになぜ変更するのだろうと、佐藤はベンチで疑問に思っていたという。

答えはピッチに出てから分かる。
大歓声に包まれたホームゴール裏。選手の誰よりもサポーターに近い位置で佐藤は勝利の瞬間を迎えた。
試合前のエンド変更は、ともに戦ってきた仲間たちの粋な計らいだったのだ。

真面目な性格で多くの仲間やサポーターに愛された佐藤昭大。
順風満帆は現役生活ではなかったが、16年間真摯にサッカーと向き合ってきた男は、最高のフィナーレをピッチで迎えることになった。

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