身長161センチと小柄ながら、力強いドリブルで突破を仕掛けるFW深井正樹。
深井の武器はドリブルだけでなく、激しく衝突しても当たり負けしない強靭なフィジカル、身長差を感じさせない太い首を駆使して放たれるヘッド、そして強力なミドルシュートと幅広い。
大学時代は巻誠一郎とコンビを組み、「大学史上最高のツートップ」と評され、ユニバーシアード代表メンバーにも選出され、北京大会にて金メダル獲得。
小さな巨人はJリーグでも存在感を示し、14年間のプロ生活の中でJリーグ通算317試合に出場し50得点を記録した。
深井正樹のJリーグ入り前
深井正樹は1980年に山梨県南巨摩郡増穂町(現:富士川町)に生まれる。
小学3年生で所属した増穂サッカースポーツ少年団でサッカーを始め、6年生の時にで全国大会出場も経験した。
増穂中学校に入学後、甲西トラベッソ(旧甲西町・現南アルプス市)に入団。「ドリブルが得意な選手を育てる」というクラブの指導方針の元、練習を重ねドリブルという武器が生まれる。
中学卒業後、山梨県立韮崎高校に進学。1年、3年時に全国高校サッカー選手権に出場。3年時には背番号10を背負い、アタッカーとしてプレーするも1回戦で林丈統擁する滝川第二にPK戦の末に敗れている。
高校卒業後に駒澤大学に進学。2000年春には大学選抜入りを果たし、11番を背負って韓国大学選抜と対戦。スタメン出場のうえ2ゴールをあげて日本の勝利に大きく貢献している。
2002年、駒沢大学は念願の大学リーグ初優勝を達成。巻誠一郎とコンビを形成してゴールを量産。共に得点王に輝き、3年連続のベストイレブン選出、4年連続リーグ出場、MVP、ベストヒーロー賞と各賞を総なめにした。
2003年、深井正樹は大学卒業後に鹿島アントラーズに入団する。
深井正樹のJリーグ入り後
鹿島アントラーズに入団した深井はすぐさま頭角を現す。
2003年3月22日1stステージ第1節浦和レッズ戦で、平瀬智行と交代して後半からJリーグ初出場を果たし3-1での勝利に貢献。
この年は鹿島のFWはエウレル、鈴木隆行、長谷川祥之、平瀬智行など戦力が充実していたがリーグ戦22試合に出場。2ndステージ第12節ガンバ大阪戦で開始41分にJリーグ初得点を決めると、続けて51分に2点目も決める活躍を見せた。
2004年からは背番号11を背負い、その後も強力なドリブル突破と裏への飛び出しを武器にコンスタントに出場を続ける。FWだけでなくサイドハーフとしてもプレー。得点数こそ少ないものの攻守にわたる深井の献身的なプレーは、能力の高い選手が多く在籍する鹿島の中でも強い存在感を示した。
2007年はアルビレックス新潟で1シーズンプレーし、2008年は名古屋グランパスにレンタル移籍。名古屋では半年間の在籍で出場機会にも恵まれなかったが、自分と向き合う事の出来た大事な期間であったと後に語っている。
2008年夏にジェフユナイテッド千葉へレンタル移籍。
大学時代の相棒である巻誠一郎と再びツートップを組む事になった。深井は、選手が連動するサッカーにすぐにフィットし、第28節浦和レッズ戦では前半開始23秒に先制ゴールを決めると後半12分にも決め3-2での勝利に貢献。降格圏から脱出する勝利の立役者となった。
2009年からはジェフに完全移籍。背番号9を背負い、突破力のあるサイドハーフとしてプレーするもこの年、ジェフはJ2に降格。
2011年シーズンはノルウェー人FWで身長201センチのオーロイとツートップを形成。身長差40センチの2人は凸凹ツートップとして話題となった。開幕戦のギラヴァンツ北九州戦でさっそくゴールを決める、とこのシーズンはリーグ戦36試合に出場しキャリアハイとなる14ゴールをマークした。
2013年シーズンは出場機会が減少し、リーグ戦13試合に出場でノーゴールに終わるとジェフを退団。この年の年末に自主練習中に至近距離でボールが目に当たり網膜剥離を患ってしまう。3ヶ月の安静、2度の手術、リハビリを経て2014年6月にヴィファーレン長崎へ加入。
長崎では背番号9を背負い経験豊富なベテランとしてチームを牽引。ほとんどが後半からの途中出場となったがシーズン途中の加入ながらリーグ戦20試合に出場を果たした。第33節カマタマーレ讃岐戦では貴重なゴールをマークし1-0での勝利に貢献した。
しかし2015年はリーグ戦7試合の出場に留まり長崎を退団。引退も考えたがJ3のSC相模原からオファーを受け入団。
相模原ではGK川口能活や近藤祐介らと共にプレー。リーグ戦30試合中28試合に出場し5得点を挙げる活躍を見せるが相模原はリーグ戦11位に終わり、この年限りで深井正樹はユニフォームを脱ぎ14年間のプロキャリアを終えることになった。
深井正樹の引退後と現在
深井正樹は引退後、2017年より古巣であるジェフ千葉の普及部コーチに就任。
2019年からは母校である駒澤大学総合教育研究部スポーツ・健康科学部門助教および同大学サッカー部コーチに就任している。
深井正樹は現役時代、力強いドリブルと裏への素早い飛び出しで数々のチャンスを演出した。
小柄な深井が大柄なDFをキレのあるドリブルで抜き、強烈なシュートをゴールネットに突き刺す。そんなシーンを見てサポーターでなくとも深井正樹のプレースタイルを見て魅了された人は多いだろう。
大学時代に史上最高のツートップを組み、その後に日本代表としてワールドカップに出場を果たした巻誠一郎も実に味のあるFWだった。
巻と比較すると深井正樹のプロ生活は順風満帆だったとは言い難いのかもしれない。
しかしこれ程にボールを持つと何かをしてくれそうな雰囲気を感じさせる選手がどれ位いるだろう。
ジェフで実現したが、駒沢大学時代から見ている筆者としては、日本代表でこの2人のツートップを一度観てみたかったと思うのである。