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辻本茂輝の現役時代、生い立ちやプレースタイルに迫る【第345回】

恵まれた体格を生かしたマンマークが得意のセンターバック、辻本茂輝。

小野伸二、稲本潤一ら黄金世代の中で守備の本格派として知られ、1999年ワールドユース(現U-20W杯)は日本のDFの中心選手として活躍。

フィリップ・トルシエの代名詞であるフラット3を中田浩二、手島和希と共に体現し、日本の準優勝に貢献した。

球際に強く、ルーズボールに対して体を当てて相手を弾きとばすほどのフィジカルが魅力だが、チーム状況によっては左サイドバックを務める器用さを見せた。

辻本茂輝のJリーグ入り前

辻本は1979年に大阪府に生まれた。

親の仕事の都合で小学校4年生まで神奈川県横浜市で生活しており、この頃は野球と水泳に没頭していた。

親の転勤で大阪に戻ると、友達の誘いでサッカーを始めることになる。

辻本はこの頃から体格に恵まれており、大きな体を生かしてGKでプレーしていた。

吹田第六中学校入学後、サッカー部に入部し本格的にサッカーに取り組むようになるとDFに転向。

DFになってからヘディングの練習を集中的に行うことにより、空中戦の強さのベースはこの頃に出来ていた。

辻本は3年連続で全国大会に出場し大阪選抜に選出されるなど、早くから頭角を現すようになる。

近畿大学付属高校進学後、1年次からレギュラーとして活躍。

1、2年次は全国選手権出場を経験し、U-17日本代表に選出。海外遠征の機会を得て、世界を知ることになる。

高原直泰、小野伸二、稲本潤一、酒井友之新井場徹らと共にU-17日本代表としてFIFA U-17世界選手権に出場。

グループリーグでアメリカ合衆国、エクアドル、ガーナと対戦するが得失点差で3位となりグループリーグで敗退している。

高校卒業後、オファーを受けていた横浜フリューゲルスに入団する。

辻本茂輝のJリーグ入り後

横浜フリューゲルスに入団した辻本だったが、加入初年度に財政難で横浜マリノスとの合併によりクラブが消滅するという憂き目に合う。

辻本は同期入団の遠藤保仁、手島和希、大島秀夫らと共に京都サンガへ移籍する。

1年目、加茂周監督の元で2ndステージ第1節浦和レッズ戦で初めてベンチ入りを経験すると、第7節ヴェルディ川崎戦でスタメンでデビューを飾り1-0の勝利に貢献。

この年はU-20日本代表に選出され、ナイジェリアで開催されたFIFAワールドユース選手権へ出場。

小野伸二、本山雅志、高原直泰、稲本潤一、遠藤保仁、小笠原満男、酒井友之、中田浩二らを擁した日本代表は黄金世代と呼ばれ、辻本はDFの中心選手として活躍。

辻本はトルシエ監督の戦術であるフラット3において、ラインコントロールを担った。

グループリーグで初戦のカメルーン戦を落とすも、続くアメリカ合衆国、イングランド戦を制し、グループリーグを1位突破。
中田浩二、手島和希と組んだフラット3は世界相手に通用し、日本の準優勝に大きく貢献した。

ワールドユースで活躍した辻本だったが、所属する京都は最下位争いをしており、監督も清水秀彦、加茂周、エンゲルスと変わるなど迷走していた。

辻本自身もサイドバックでの起用など、起用されるポジションが安定しない試合が続き、レギュラーも確保できずにいた。
辻本は2000年、シドニーオリンピック予選を戦う日本代表メンバーに選出されるも、本戦のメンバーからは漏れている。

京都では2005年までプレーするも、怪我の影響もありレギュラー確保には至らず、2006年に徳島ヴォルティスへ移籍。
リーグ戦18試合に出場するも1年で契約満了となった。

2007年にはJFLの佐川印刷FCへ加入。
プロ契約ではなく、社員選手として2年間仕事をしながらプレー。
朝練習をして昼から仕事をする生活を送っていたが、サッカーに専念できる環境を求め退団。

2009年にはヴィッセル神戸でスクールコーチをやりながら、大阪社会人リーグ1部所属のFC大阪にてテクニカルディレクター兼任でプレー。
リーグ戦1試合に出場し現役を引退した。

辻本茂輝の引退後と現在

辻本は引退後、ヴィッセル神戸のスクールコーチやU-15コーチを経て、2014年に関西1部のアルテリーヴォ和歌山の監督に就任。

その後はガイナーレ鳥取コーチやFCティアモ枚方の監督を経て、2020年から鹿児島ユナイテッドFCの指導者として活動している。

辻本は、ワールドユースを共に戦った18名の中で、1番早くユニフォームを脱ぐことになった。
それにしても12年に及ぶ現役生活の中で得たものは限りなく多いだろうと思う。

辻本はテクニックやプレースピードではなく、フィジカルで勝負し、気持ちを前面に出してプレーする選手で、個人的に応援していた選手だった。

ワールドユースでの活躍を見て、いつかフル代表で辻本を見たいと思っていた人も少なくないだろう。

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