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井上平の現役時代、生い立ちやプレースタイルに迫る【第256回】

井上平は豊富な運動量があり、最前線で走り回りチャンスを作るアタッカーだ。

法政大学時代は関東大学リーグ得点王を獲得し、大学リーグベストイレブンに輝いた実績を持つ。

オフザボールの動きに定評があり、DFの裏への積極的な飛び出しで多くの決定機を作った。

プロになってからは得点数は少なかったものの前線からのチェイスで守備にも貢献。尽きる事のないスタミナは相手チームの脅威となった。

井上平のJリーグ入り前

井上平は1983年東京八王子市に生まれた。幼稚園の頃からボールを蹴って遊んでいたという。

野球コーチをしていた父の知人がコーチを勤める桑の実サッカークラブへ入団し小学2年でサッカーを始めた。様々なポジションを経験し小学6年生あたりでFWとなる。

八王子市立第二中学校へ進学。中学卒業後は1年間、語学勉強という名目でブラジルに留学。留学先の家族は12人兄弟で、長男が元コリンチャンスの選手であった為、家族が経営するサッカースクールのコートでよく遊んでいたという。

帰国後、サッカーの名門である清水商業高校へ入学。同学年に菊地直哉がいた。年齢は井上が1つ上だが、留学を経験しているために学年上は同一となる。高校時代はサイドバックも経験するがやがてFWに落ち着いた。高校では全国高校総体に出場し、準決勝では選手権王者の国見高校相手にゴールを奪うが2-5で敗れている。

高校卒業後、大滝監督からの勧めもあり、法政大学へ進学。サッカー部ではキャプテンを務め、2005年に関東大学サッカーリーグ戦の得点王とベストイレブンのタイトルを獲得。2006年には関東大学選抜Aに選出されるなど活躍を見せた。

2007年、井上は東京ヴェルディ1969に入団する。

井上平のJリーグ入り後

井上は加入初年度のJ2第1節ザスパ草津の開幕戦からベンチ入りを果たし、80分に船越優蔵と交代でピッチに入りJリーグ初出場。89分にフッキの得点をアシスト。チームは5-0と快勝を納めた。この年はリーグ戦12試合に出場した。この年、ヴェルディはJ1昇格を果たしている。

J1での2008シーズンは出場機会に恵まれず、チームも1年でJ2に降格となってしまった。3年目の2009年はスタメン出場したJ2第46節ファジアーノ岡山戦では開始1分と35分に待望のプロ初ゴールを決め、チームを勝利へ導いた。その後もスタメンとして活躍、終盤6試合で5得点を挙げる活躍を見せた。

2011年、契約満了でヴェルディを退団。シーズン終了後にJリーグ合同トライアウトに参加する。

2012年FC岐阜へ完全移籍。

リーグ戦42試合全てに出場し主力選手としてプレー。前線からの積極的な守備で攻守に渡り活躍。2013年シーズンも活躍が期待されたが、J2第3節ザスパクサツ群馬戦において右ひざ関節内側側副じん帯損傷を負い戦線離脱を余儀なくされた。その後もトレーニング中に負傷し手術、リハビリをし復帰をしたが完全復帰には至らず2014年に岐阜を退団。

2015年にJ3のSC相模原へ移籍。

怪我の影響も懸念されたが主力選手として活躍。加入初年度はキャリアハイとなるリーグ戦8得点を挙げた。相模原には2年間在籍し、2年で通算55試合に出場13得点を記録。

井上は2016年をもって現役を引退した。

井上平の引退後と現在

井上平は引退後、母校である法政大学のコーチに就任した。

井上は現役時代、Jリーグ通算164試合に出場し23得点の成績を残している。FWとしては得点数は少なかったがチームの為に最後まで走る事の出来る運動量のある選手だった。

井上がプロ時代に多くを過ごしたJ2リーグはJ1よりも過酷なリーグとして知られる。その理由として、昇格条件、過密なスケジュール、シーズン途中での選手の引き抜きなど様々な問題が挙げられるが個人的には実力の均衡が一番の特徴だと思う。簡単に言うとずば抜けた実力が無ければJ2リーグを勝ち上がりJ1に昇格する事は難しい。いや、万が一勝ち抜けたとしてもJ1に定着するのは至難の業だろう。

長年J2リーグを見てきて過酷なリーグ戦を勝ち抜くには2つのパターンが存在すると感じる。

1つが、軸となるスーパーな選手をいかに多く獲得出来るかだ。実力が均衡したJ2リーグを勝ち抜くには圧倒的な違いを見せれる選手が必要だ。苦しい局面で点の取れるストライカー、ボールを奪われずにゲームの流れをコントロール出来るアンカーなど、フォーメーションの軸となるポジションにJ2レベルでない選手を置く事が出来るかが重要になってくる。

この戦術に成功したチームは高い確率で昇格に近づく事が出来る。仕方のない事だが予算のあるチームがより有能な選手を獲得出来る。しかし現状は予算も苦しいチームがほとんどであり、なかなか実現する事は難しい。もし運良く獲得出来たとしても戦術にフィットしなければまるで意味はない。

もう1つは全員が連動して走る、機動力を武器とするチームだ。湘南ベルマーレや松本山雅はJ2時代、スーパーな選手は存在しなかったが機動力を武器に走り負けないサッカーを続け見事にJ1に昇格した。

チームとしても選手個々の力を見ても実力が均衡したチームがズラリと並ぶJ2では、いかにあと一歩、相手より足が出るかが重要になってくる。

私がもしもJ2リーグを戦うチーム作りをするのであれば、スーパーなテクニックが無くても最後まで走り切る事が出来る豊富な運動量と強い気持ちを持った選手を揃えたい。1年を通して42試合の総当たり戦を勝ち抜くには機動力が必須だと感じる。FWが守備もこなし、DFが点を取り、GKもビルドアップに参加する。全員で攻めて全員で守る。11人でなくチーム全員でだ。それも圧倒的な機動力でないと意味はない。

個人的にはJ2のチームはJ1や海外トップリーグのようなサッカーはすべきではないと思う。J2リーグは異質なリーグであり、スーパーな選手が少ない分、チームの完成度がモノをいう。総合力で戦ってこそ勝ちあがれるのだと感じる。

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