守備的MFとして東京ヴェルディやヴィッセル神戸でプレーした菅原智。
危機察知能力に優れ、高いボール奪取力でピンチを未然に防ぐ事が出来るボランチ。
幅広いエリアをカバー出来る頼れるボランチとして16年に渡りJリーグでプレーした。
試合では黒子に徹し、決して目立つ存在ではなかったが陰ながらの貢献度は非常に高い。
菅原智のプロ入り前
小学校の時にサッカーを始め、地元の強豪チームである「川崎YMCA」に所属。同期には薮田光教、高田保則の兄がいた。
小学校6年の時に読売クラブ(現東京ヴェルディ)の育成組織に所属。
神奈川県立菅高等学校へ進学後に読売ユースに昇格した。高校サッカー部とは違い、読売ではプロの選手の横で同じピッチで高いレベルでプレーする事ができ菅原智は多くの事を学んだという。
1995年、高校卒業後にユースからトップチームに昇格。ヴェルディ川崎とプロ契約を結んだ。
菅原智のプロ入り後
1995年7月19日 サントリーシリーズ第25節浦和レッドダイヤモンズでJリーグデビューを飾ると、強烈なミドルシュートを叩き込んで、初出場初ゴールを決め勝利に貢献した。
デビュー1年目は1試合のみの出場に留まるも、2年目に監督がネルシーニョからレオンに変わると、ボランチのレギュラーを獲得。
三浦泰年とボランチコンビを組み、1996年天皇杯制覇に貢献。
しかし1997年をもってヴェルディは読売から日本テレビへと運営会社が変わり、大幅な予算削減を余儀なくされる。その影響を受け菅原智はこの年をもってヴェルディから戦力外通告を受ける。
その後、ヴェルディで指導を受けたレオン監督が率いるブラジルの名門サントスFCに加入。
環境の変化に戸惑いながらもデビュー戦では後半から出場し中盤の守備に専念。1-1での引き分けに貢献しラジオ局の選ぶMVPに選出された。全国選手権にも出場するなどリーグ戦4試合に出場し1得点を挙げた。
しかしレオン監督の更迭もあり、菅原はサントスから突然の解雇通告を受ける。シーズン終了までブラジルに残り練習をしたいとクラブに申し出るもピッチに入る事も禁じられ、すぐにアパートを引き払うように言われた。
ブラジルで厳しくも貴重な経験を経た菅原智は帰国後にヴィッセル神戸に加入する。
加入したヴィッセル神戸では2000年3月11日の第1節サンフレッチェ広島戦で途中出場で神戸でのデビューを飾る。
このシーズンはリーグ戦22試合に出場した。
翌年からは背番号6を背負う。
2003年11月22日第14節京都パープルサンガ戦ではJ1残留を決める大事な一戦となったが献身的に守備を行い神戸の勝利に貢献した。
2005年9月3日セレッソ大阪戦で久々にゴールを決めたが同年ヴィッセルから戦力外通告を受ける。
2006年にJ2降格した東京ヴェルディに復帰。
ヴェルディでは中盤の底でプレーし、スペースを埋める役割を担った。
2007年は名波浩の後ろでボランチの役割を果たし、フッキやディエゴという強力な攻撃陣を支え、ヴェルディのJ1昇格に貢献したが翌年に下位に低迷し1年でJ2に降格してしまう。
2009年4月15日サガン鳥栖戦ではヴェルディのキックオフ直後、自陣に戻されたパスに誰も反応せず、菅原がボールを奪いに来た鳥栖のFW池田圭を手で倒した為、試合開始わずか9秒で一発退場となった。
これはJリーグ公式戦のそれまでの記録(開始1分)を塗り替えるとともに、1990年にイタリア・セリエAでボローニャのジュゼッペ・ロレンツォが記録した開始10秒を抜き、世界のプロリーグ最速退場記録となった。試合は100分間(ロスタイム含む)、10人で戦った東京ヴェルディが2-0で勝利を納めた。
2010年頃から出場の機会が減少するも、勝っている試合で味方に落ち着きを与えゲームを終わらせられる事が出来る選手として重宝され、ベンチ入りを続ける。
2011年シーズンはリーグ戦2試合の出場に留まり、現役を引退した。
菅原智の引退後と現在
菅原智は引退後、東京ヴェルディのコーチに就任。
語学力をかわれ、通訳兼トップチームコーチとして活躍している。
菅原にとってブラジルのサントスFCでの1年間は非常に大きな経験だったのではないか。
ハングリー精神という言葉がある。
ブラジルでは貧富の差が激しく高額所得が得られる数少ない職業のひとつのプロサッカー選手になる為に毎日熾烈な戦いが繰り広げられる。
日本の選手に、シューズを買う金さえないブラジル人が抱くようなハングリー精神を望むのは難しいのかもしれない。
菅原智は22歳で戦力外通告を受け単身地球の裏側に渡り、日本人が1人しかいない状況でサッカーに打ち込んだ。次から次に新しい選手が現れ、見込みがないと判断されればいとも簡単に見切りをつけられる。そんな厳しい環境の中で揉まれ、菅原智はハングリー精神という文化に触れた。
フットボールの聖地で菅原智が得た経験は計り知れない程大きいと感じる。